今回はデリバティブの中でも特にオプション取引について簡単にご紹介します。
今回はデリバティブ(金融派生商品)の中でも、特にオプション取引にフォーカスして、その仕組みについて簡単にご紹介します。オプション取引とは、将来の決められた日或いは期間迄(行使期限)に、決められた価格(行使価格)でモノ(株式や債券など)を買う(或いは売る)「権利」を売買する取引のことを指します。
【目次】
1.デリバティブとは
2.オプション取引
3.オプション価値に影響する要素
4.オプションの種類
5.オプションの損益グラフ
1.デリバティブとは
まずは、SMBC日興証券の用語集からの抜粋です。
デリバティブとは…
株式、債券、金利、通貨、金、原油などの原資産の価格を基準に価値が決まる金融商品の総称です。原始的な商品から派生した商品として、金融派生商品と呼ばれ、英語の“派生する(derived)”を語源としてデリバティブとも呼ばれます。取引形態としては、先物取引、オプション取引、スワップ取引、フォワード取引などがあります。古くは米や綿花などの農作物を対象とした先物取引から発達し、1990年前後からは、株式、債券などの金融商品を対象とした先物取引、オプション取引、スワップ取引などが活発に取引されるようになりました。近年はこれらのほかに天候(降雨量や降雪量、気温など)や信用力などを対象とする取引(天候デリバティブやクレジットデリバティブなど)も登場しています。
ちょっと分かり難かったかもしれませんがとりあえずは、オプション取引など色々な種類の取引がある、何れも株式や金、原油などの裏付けとなる資産(原資産)の価格を基準にデリバティブの価値が決まるとだけ理解下さい。
以降は、デリバティブ取引の中でも、オプション取引について見ていきます。
2.オプション取引
オプション取引とは、将来の決められた日或いは期間迄(行使期限)に、決められた価格(行使価格)でモノ(株式や債券など)を買う(或いは売る)「権利」を売買する取引のことを指します。
オプションの価値はOption Premiumと呼ばれ、Time Value(時間的価値)とIntrinsic Value(本源的価値)で構成されます。
Option Premium=Time Value+Intrinsic Value
Time Valueは、オプションの主に行使期限までの長さ(時間)に依拠する価値です。行使期限が長ければ長いほど価値は高まります。また、下図の様に時間の経過と共にTime Valueは逓減していき、行使期限でゼロとなります。分かり易く言うと、オプションの行使期限までの時間が長ければ原資産の価格変動してオプションを行使出来る可能性が高そうだ、だからTime Valueが高いのだと考えて下さい。
一方で、Intrinsic Valueは、そのオプションを権利行使した際に得られる価値を指します。例えば、行使価格1,000円でA社の株式を購入できるオプションを保有する投資家を考えてみましょう。A社の株式が1,200円のときに、投資家が当該オプションを行使すれば、時価よりも200円安く購入することができ、購入したA社株式を時価で売却出来れば200円のリターンを得ることが出来ます。この200円がIntrinsic Valueにあたります。
では、A社の株式が1,000円以下(行使価格以下)の場合はどうなるのでしょうか?株価が1,000円であれば時価と等しいので前述の取引を行った場合の損益はゼロです。株価が1,000円より小さい金額で行使した場合は、時価よりも高値で購入しているのでIntrinsic Valueは寧ろマイナスになってしまう様に思われます。しかし、オプション取引は売買する権利を有しているだけなので、この様な場合はその権利を行使しないので、マイナスになるということはありません。(権利放棄するのでゼロです)。よって、Intrinsic Valueは常に0以上ということになります。
オプションが発行されたタイミングでは行使価格と時価とは当然乖離があり、すぐに行使することが出来ません。よって、この場合は、前述の通りIntrinsic Value=0なので、発行当初はOption PremiumはTime Valueで構成されていることが分かります。そして、Time Valueは時間の経過と共にゼロに近づき、一方で原資産価格(株価)が上昇し行使価格を上回ってくればIntrinsic Valueが増加し、Option PremiumはIntrinsic Valueに収斂していきます。以下の図がイメージをつかむ上でとても分かり易いと思います。
3.オプション価値に影響する要素
オプションの価値はTime ValueとIntrinsic Valueで構成されることが分かりましたが、これらの価値に影響する要素をもう少し細かく見ていきます。
<オプション価値に影響する主な要素>
・原資産の価格
・行使価格
・満期までの期間
・金利
・ボラティリティ
ここでは、ボラティリティについて簡単に補足します。ボラティリティは原資産価格の変動の激しさを表すパラメータです。例えば、株価のボラティリティが大きいというのは、値動きが(上下問わず)大きくあるということです。値動きが大きいということは、当然価格に到達する可能性が高まるため、ボラティリティが大きい程、オプションの価値は大きくなります。
4.オプションの種類
オプション取引はモノを売買する権利を指すとご紹介しましたが、その中で買う権利をコールオプション(Call Option)、売る権利をプットオプション(Put Option)と呼びます。そして、オプション自体を買うことをロング(Long)、売ることをショート(Short)と呼びます。例えば、先程の例にあったA社の株式を行使価格1,000円で購入できるオプションを買う場合は、Long-Callのポジションと言います。
5.オプションの損益グラフ
以下にオプション取引別の損益グラフを示します。
まずは、左側の買い手(Long)を見てみましょう。コール(行使価格で買う権利)の場合(左上)は、原資産価格が行使価格を上回る迄は、当初コールオプションを購入する際に支払ったプレミアム相当分の損失を抱えることになります。行使価格を上回って原資産価格が上昇することで、利益が生まれます。図から明らかな様に、原資産価格が行使価格を上回っても取引当初に支払ったプレミアム分のマイナスがある為、すぐには利益は生まれません。
次にプット(行使価格で売る権利)の場合(左下)は、コールオプションの場合と同様に、当初プットオプションを購入する際に支払ったプレミアム相当分の損失を抱えることになります。但し、プットの場合は(時価よりも高値で売ることが出来るため)原資産価格が行使価格を下回ることで利益が生まれます。
一方で、右側はオプションを売る側なので、買い手からプレミアムを受け取ることになります。そして原資産価格の変動による損益の動きは買い手と真逆の動きをすることになります。
如何でしたでしょうか?最後に参考図書をご紹介しておしまいです。(SBで紹介した書籍と一緒になってしまいますが、同様の理由からお勧めします。)
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