今回はDisruptive StrategyとTransferWiseのについてご紹介します。
今回はトランスファーワイズ(TransferWise)のケーススタディを基に、破壊的戦略(Disruptive Strategy)についてご紹介します。Disruptive Strategyは、エンドユーザー向けの新たな価値を直接かつ素早く提供したことによって、市場を破壊し、そして自身を新たな戦略フロンティアにポジションニングするものです。
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【目次】
1.Disruptive Strategy
2.ケーススタディ(TransferWise)
3.まとめ
1.Disruptive Strategy
最初に2つの会社(VanguardとWARBY PARKER)についてご紹介します。
Vanguardは約$5.4Triの資産を運用するファンドで、世界初の個人投資家向けにインデックスファンド(平均的なリータンを低コストで)を販売したことで有名です。
WARBY PARKERは米国のユニコーン企業でオンライン販売のみ(送料・返品無料)で平均$100/個のメガネ(レンズ付き)を販売しています。創業からわずか5年で$100M以上の売上に急成長しました。
これらの企業がとった戦略は既存の大手企業の多くが容易に真似出来るものではありましたが成功しました。それは何れのケースも、エンドユーザー向けの新たな価値を直接かつ素早く提供したことによって、市場を破壊したこと、そして自身を新たな戦略フロンティアにポジションニングしたことに依拠します。これが正にDisruptive Strategyです。では、なぜ大手企業は真似をしなかったのでしょうか?
それはどの企業も初めにニッチ(unfavorable or unfamiliar)な市場セグメントに参入したことに起因します。そうすることで、既存顧客をもつ大企業が反応するのが遅い、あるいは無視するからです。では、なぜ対応が遅れたり無視するのでしょうか?それは初期段階ではDisruptive Strategyを実行している企業が参入した市場が
①大企業からすると行き過ぎた顧客にフォーカスしているため
②既存顧客セグメントの売上とカニバルため→イノベーターのジレンマ
魅力的な機会に見えない為です。では、今度はDisruptionの種類について見ていきましょう。
Clayton M. Christensenがイノベーションのジレンマを発表した際にはテクノロジーに依拠したDisruptionにフォーカスしていたそうですが、今はビジネスモデルも含めた概念となっているそうです。
・既存のビジネスモデルと全く異なるものの発見
・新たなビジネスモデルは既存の市場規模を拡大する
・新たな商品やサービスを発見した訳ではなく、既存商品やサービスが何なのか、またどのように提供されるかを単に再定義したもの
②テクノロジー経由(抜本的な改革)
・この種のイノベーションは顧客を破壊する、なぜなら顧客の習慣や行動を大きく変える商品を導入するから
Disruptive Strategyを考える上でBeachheadとなる場所を探す取っ掛かりになる考え方としてDecoupling the Value Chainていうものが使われるそうです。
<Decoupling the Value Chain(VC)>
既存VCの一部分だけをみて、それを既存のものより良くしようという考え。顧客が満足していない箇所を探す。
また、Disruptive Strategyを作り上げ実践するためにDO(すべきこと)/DON’T(避けるべきこと)こととして一般的に如何が挙げられるそうです。
DO
①露見することを避ける(大手に気づかれない)
②差別化(競合がいないポジションを選ぶ)
③顧客フォーカス(ニッチ顧客のニーズに合わせる)
④細かな改善(ニーズに合わせるためリアルタイムで市場での実験をする)
DON’T
①顧客と新たな価値提供にフォーカス(大手との比較ではなく)
②Sカーブを急いで登ろうとしない(まずはアーリーアダプターにフォーカス、何れにせよ時間はかかるもの)
③Value Chain構築の費用を過小評価しない(時間とお金は思った以上にかかる)
2.ケーススタディ(TransferWise)
TransferWiseは2011年にエストニア人のKristo KaarmannとTaavet Hinrikusが起業したP2Pの送金サービスです。2018年の売上高が$151M(前期比+78%)、当期利益$8Mと急成長しているユニコーン企業です。ユーザー数も2017年の約100万人から2018年には約400万人と4倍以上に増加、毎月$4bil以上の資金移動が成されているそうです。(2015年時点で世界全体の海外送金の金額は年間で$500bil以上だそうです。未だ市場規模の1%のシェアも獲得してないのでまだまだ大きな成長余地がありますね。)2018年にはイングランド銀行よりノンバンクとして初めてRTGS(Real Time Gross Settlement System、即時グロス決済と呼ばれる中央銀行と金融機関との口座振替ができるシステム)へのアクセスが認められたそうです。
TransferWiseが創業に至った経緯は個人的に非常に好きです。Kristoは2006年に英国のデロイトで働いており、毎月ポンド建てで給与を受け取っていましたが、住宅ローンの返済をエストニアの口座にユーロ建てで毎月送金する必要がありました。一方で、Taavetは同じ頃にSkypeの英国オフィスに転勤してきましたが、勤務先のSkypeからはEuro建てでエストニアの口座に給料が振り込まれるも、生活費はポンドで支払う必要があり、エストニアの口座からイギリスの口座に毎月生活費を振り替えていました。2人とも英国とエストニア間での資金送金で銀行に送金手数料を大きく取られていることに共通の問題意識を持っていた為、互いにポンドとユーロをロイターの為替レートで計算して送金し合う(Kristoの英国の口座からTaavetの英国の口座にポンドを振込み、エストニアのTaavetの口座からエストニアのKristoの口座にユーロを振込む)ことでこの問題を解消しました。(2010年までに数千ポンドの手数料を削減出来たそうです。)この原体験から2人はTransfer Wiseの起業に至ったそうです。
彼らがとった戦略は正にDisruptive Strategy(via business model)に該当します。海外送金という顧客が不満を持っていた所を取って代わった訳です。そして、P2Pの送金の仕組みによって為替手数料を抑え、また実店舗を持たずにネットで手続きを完結させることで、既存の金融機関対比で支店などの建物の維持費(固定費)を抑えることで効率性が増し圧倒的な価格競争力(既存の金融機関と比べて極端に低い送金手数料)が生み出されます。
◆TransferWiseの紹介
https://www.youtube.com/watch?v=ozVV2jsEjuQ
3.まとめ
如何でしたでしょうか?TransferWiseは本当に便利で、私もロンドンに来る前後で本当にお世話になりました。直近のRoundに基づくValuationで$3.5bn位と更に成長しており今後も目が離せないフィンテック企業の一つだと思います。
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