UCL留学-講義-Strategic Management④(ネットフリックス)

今回はNetflixのケースをご紹介します。

今回は、皆さまにも馴染み深いNetflix(ネットフリックス)のケーススタディについて扱います。今や世界的な動画コンテンツ配信会社となり、質の高い自主制作作品が人気を呼び、急成長しています。そんなNetflixの成長の歴史や彼らがとった戦略についてご紹介します。(最後にグループメンバーも簡単に紹介します。)

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【目次】
1.ケーススタディ(Netflix)
2.まとめ

 

1.ケーススタディ(Netflix)

Netflixは1997年にReed HastingsとMarc Randolphによって創業されました。今は日本だけでなく世界中で有名な動画配信サービスを提供する企業ですが、創業当時はDVDを自宅に郵送するサービスを提供することから始まります。ちょうどDVDが普及し始めたタイミングに、このサイズなら郵送できると目を付けてサービスをローンチしました。

DVDプレーヤーのメーカーとタイアップし、Netflixのクーポンを箱の中に梱包して貰い宣伝していたそうですが、当時はDVD自体がそこまで普及していなかった中、ハードを購入した人がすぐに作品(ソフト)を楽しめる環境をセットで提供することに繋がり、Win-Winの関係を築けたそうです。

最初のサービスは、DVD1本$4に$2の輸送費で自宅まで届けるもので、借主が気に入れば、割引価格でDVDをそのまま買い取ることも出来るというものでした。当時はそもそもDVDを購入できる場所が限られていたので、Netflixの主要な収益源でしたが、AmazonやWalmartなどの小売店がDVDを販売し始めたことで脅かされます。そこは、NetflixがAmazonとcross promotion dealを締結することで(Amazonのプラットフォームで宣伝し、NetflixがDVDを販売する)、上手く協力関係を築いています。

実店舗(Brick&Mortar)を持たないことで店舗の維持費や人件費を抑え、一方で店舗で借りる様な体験をWeb上でできる様なサイトの構築に力を入れました。また、新作を勧めする代わりに旧作でも良い映画を勧める珍しくてニッチな海外の映画を扱っているとの評判を作り、一方でNetflixの在庫の仕入れコストを下げることにも繋がりました。

1999年にはMarquee Programと呼ばれる、月額$20で6本のDVDを借りることができ、6本を全て返却すれば、別の6本を借りることが出来るという、所謂subscription型のサービスを導入します。導入後6か月間で貸し出しが3倍以上に増えたことから、2000年には月額$15.99で一度に4本のDVDを本数無制限で借りられるものに移行しています。

それ以降も、4Gなどネットの配信速度の向上に伴い、現在提供している様な定額制のstreamingサービスの提供にシフトしていきます。技術の発展とNetflixがとった戦略を時系列に纏めたものを以下に示します。

Disruptive Strategyはテクノロジーとビジネスモデルを経由したパターンがありますが、Netflixは双方を巧みに取り入れつつ、従来のレンタルショップに訪問し、ソフトを借りるという消費者の行動を変えたことになります。

The History of Technological Advancement and Disruptive Strategy
◆The History of Technological Advancement and Disruptive Strategy

一方、Netflixがサービスを提供し始めたときに米国でレンタルビデオ、DVD店として優勢を誇ったのが、Blockbusterでした。24時間店舗を出したら、ライバル店舗を次々と買収しシェアを拡大していき、2000年には7,700店舗、売上$4.96Bn、純利益$535Mを叩き出していました。同時期にNetflixは30万人の定期会員、$57Mの純損失を出していました。資金繰りに困ったHastingsがBlockbusterに提携(Netflix株式の49%を持ってもらう)を打診したこともありました。(BlockbusterはNetflixの実店舗を持たないビジネスモデルに懐疑的で申し出を断っています。)シンクタンクのレポートで、当時最大で3.6Mの潜在的な会員数がオンラインレンタルサービスで見込まれる一方で、Blockbusterは65M人の会員がおり、多くのアナリストはNetflixについて否定的な見方でした。しかし、成長を続け2002年には黒字化、IPOを果たします。

Netflixと従来のレンタルビデオ店、Blockbusterについて、以下の通りValue Curveを作成しました。Brick&Mortar(実店舗)をEliminate(削除)したり、販促をReduce(減らす)することで低コスト化を図り、自宅への配送やOnlineのSubscriptionサービスにより差別化を図ることでBlue Oceanを開拓しようとしていったと解釈出来ます。

value curve

しかし、2004年に遂にBlockbusterがNetflixを脅威と認めます。ここから、オンラインサイトを起ち上げ、会員がWeb上でDVDを選び自宅に郵送して貰える正にNetflixと同種のサービスを提供し始めました。更にSubscriptionのサービスも提供開始し、TVコマーシャルなど大規模な宣伝を行い、サービス開始から4か月で75万人の会員(Netflixが4年かけて獲得した会員数)を獲得します。Netflixも月額料金を下げることで対抗しますが、Blockbusterもすぐさま値下げし、正に価格競争に陥ってしまいます。元々の資金力に勝るBlockbusterがじわじわとNetflixを追い詰めていくことになります。

では、どうやってNetflixがBlockbusterの競争に勝ったのかというと、結構運の要素が強かったのかなとケースを読んでいて感じました。きっかけは、2007年に当時BlockbusterのCEOだったJohn Antiocoが同社の株主であるCarl Icahnと対立したことで、CEOの職を退きます。その後、セブンイレブンの取締役だったJim KeyesがCEOに就任し、実店舗に回帰する戦略に大きく舵を切ることになります。当初、242店舗を閉鎖する予定だった計画を撤回し、食事や電化製品なども提供する総合娯楽施設に店舗を改革する戦略を断行します。結果的に、Blockbusterは2010年にChapter11を申請することになります。Carl Icahn自身がきっかけを作ったにも関わらず、Blockbusterへの投資は生涯最低のものだったとコメントしてます。(ケースを読んでいて思わず笑ってしまいました。以前、富士フィルムHDによるゼロックスの経営統合でも触れましたが、当該統合を破談させたのもIcahnだったからです。昔からよく暴れ回るおっちゃんだったんですね。)

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2.まとめ

如何でしたでしょうか?Netflixは普通にユーザーとしてお世話になっていましたが、その歴史についてはちゃんと知らなかったので、内容的にも興味深いものでした。

また、冒頭申し上げた通り、これが入学して初めての課題かつグループワークでした。最初はちゃんと議論に付いて行けるのか、チームに貢献できる意見を出せるのか不安でしたが、事前にケースを読み込むことで何とかなりました。(結構自信になりました。)写真はチームメンバーとレポート提出後の1枚です。個人ワークと比べて大変な面もありますが、個人的には個性が強いこのメンバーでのグループワークは好きでした。(なんだかんだでDistinction以上の評価も貰えました。)

strategic management group members
◆Strategic Managementのグループメンバー(左からArmen(アルメニア)、Orestis(ギリシャ)、Anel(カザフスタン)、Melissa(ジンバブエ))です。

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ABOUTこの記事をかいた人

30代前半の元銀行マンです。(ハンズオン型の)投資家になりたいと考えています。その準備として会社を退職して、2019年9月から英国の大学院(University College London)で1年間Entrepreneurshipについて学びます(遠回りなことしているなと思われるかもしれませんが…)。金融関連や海外大学院留学にあたって得られた知識と、留学期間中に得られた知識の備忘録も兼ねて情報発信していければと思います。 【略歴】私大理系卒(物理学専攻)⇨国立大学大学院卒(社会工学専攻)⇨銀行勤務(M&A、資本政策)⇨グループ証券会社出向(エクイティ・キャピタル・マーケット)⇨英国大学院(MSc. Entrepreneurship専攻)⇨ヤフーギグパートナーの事業プランアドバイザー⇨宇宙系スタートアップのファイナンス担当者(現在)、仲間とボードゲーム紹介メディアBOARDも運営中(https://article.board.fan/)